不思議な一日

昨日の晩、会社の同僚から、
再び会社が経営危機だということを聞く。


わかっていたことだが
今回はかなり焦った。


なぜなら、
現在妻が仕事探しに
かなり苦労しているからだ。


いざ今の会社が潰れたら
こっちでなんらかのバイトをしていれば
しばらくは食いつないでいられるだろうと思った。


しかし現実はそんなに甘くない。


他国で働くということは
本当に大変なことなのだ。


そうなると、
日本に帰らざるをえなくなる。


帰りたくない。


それは日本が嫌いだから
帰りたくないということではない。


先日妻に「今日本に帰って後悔しない?」
と聞かれて、しばらく自分の胸に手を当てて考えた。


「まだ何かやり残したことがある。」


そう思った。


それが何かは正直よく分からないが
まだここでやるべきことがあるような気がする。


それは英語の習得かもしれない。


とにかくまだ日本には帰れない。
そう思ったのだ。


で、明くる日の今日


今日一日はとても不思議な一日だった。


というのは、
改めてここにいられる時間が少ないことを感じると
とても今日一日がいとおしく感じたのである。


なので何というかとても充実していたというか
振り返ってみて、とても良い一日であったのである。


それは特に何をやったというわけではない。


いつもと何ら変わりない一日であった。


しかし何とも言えない不思議な一日であった。


おそらく先日読んだ太宰治の短編
「新郎」の影響もあるように思う。


戦争が決まり、ひょっとしたら自分の命も
短いかもしれないと思った著者が、
一日を新郎のような気持ちで過ごす
という内容である。


自分も無意識にその「新郎」のように
過ごそうと思っていたのかもしれない。


なんとも言えない不思議な一日であった。