【19想】 まぬけの効用 / 高橋義孝

まぬけの効用 (文春文庫 (310‐2))
100円だったので買ったが
昭和31年と、相当古い本だった・・・


ほとんど読み飛ばすが
1点気になりメモ

旅も本筋は一人旅にあると思います。
(中略)
旅は人間の孤独というものを知るためものだということは、どんな旅であれ旅をしたことのある人には、合点の行くことだと思います。ところが人間は孤独ではないということは、まさにこの「人間は孤独なのだ」という認識の確立するところから出てくるのではありますまいか。孤独であって孤独でない、こういう矛盾した存在がすなわち人間という存在なのでありましょう。
(中略)
ジムメルというドイツの哲学者に「どこであれ他国で暮らすことには、言葉にいい現しがたい幸福がある。それはわれわれの二つのあこがれ、つまり漂泊(さすらい)へのあこがれと故郷へのあこがれとの綜合、すなわち生成と存在との綜合なのだから」という言葉があります。旅にはそういう形而上学的功徳があるといわれましょう。