【36想】 偶然のチカラ / 植島啓司

偶然のチカラ (集英社新書 412C)
ブックオフ100円本


言っていることは、天外さんの
運命の法則と同じようなことだったが、
いろいろな視点からそれを見ていてそれなりに面白かった。


1点印象に残ったこと。

歴史の父ヘロドトス。しかし、彼はペロポネソス戦争を記述した古代ギリシアの歴史かトゥキディデスよりはるかに評価は低いようだ。なぜならば、彼の記述は脱線ばかりで、その脱線の総量は全体の半分近くもあり、脱線のうえさらに脱線というケースも珍しくなかったからである。にもかかわらず、ヘロドトスから学ぶべきことは他のどの歴史家たちよりもはるかに多いのだから皮肉なことである。まともだからすぐれているということにはならないのである。

その理由をこう示す。

ヘロドトスの描く世界では夢や神託・卜占(ぼくせん)の類が大きな役割を果たし、それが歴史の大きなうねりをつくり出していく。すべてがそうやって、予兆が表れ、それが実現するということに進行していく。さりげない前兆が後の大きな事件となって実現する。その繰り返し。すべては理不尽なかたちで主人公の登場前に決められているのである。われわれはチェスや将棋の駒のようにただ盤上をあちらこちらと動き回るだけで、戦いの結果はすでに決定されているのだった。


鸚鵡(おうむ)は、よごれていないのに嘴を拭う。


ソフォクレスの『オイディプス王』の例を挙げるまでもなく、ギリシア悲劇もすべてこのフォーマットに従って物語が進行することになっている。かつてはすべての出来事が(時間を超えて)結びついて理解されていたのである。そして、それを明らかにすることこそ歴史を書くことの意義なのだった。

この「鸚鵡(おうむ)は、よごれていないのに嘴を拭う。」
というのがブレーズ・パスカル『パンセ』の中の言葉であることは
わかったが、意味はよくわからない・・・・


うーん、でのこの歴史に対しての
考えは面白い。